つぶやきより長く日記より短く

ひとことブログみたいに気軽に…のはずが、最近はめっきり読書blogになってます

読書感想文 第52巻

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『やり残した、さよならの宿題』

作:小川晴央/メディアワークス文庫

 

“時渡り”

主人公である元気な少年・青斗と鈴が住む、海沿いの田舎町にある神社の神さま“トキコ様”は、やり直したい時間に戻してくれる。

 

伝承の歌やお話し、実際に時渡りを体験した人の話はあれど、子どもたちは半信半疑で伝承の歌をちゃかして歌う。

年上でいじわるなガキ大将とその腰巾着。

怒ると怖いけど、実は優しい民宿のおばちゃん、そして大人や年寄りが子どもに媚びない、どこか懐かしい空気。

 

四年生の夏休みが終わると引っ越してしまう鈴のために、最高の夏休みを!と張り切る青斗と、思ったことをなかなか口に出せない内気な鈴。

トキコ様の祠のそばで夏休みの打合せ中に出会った不思議な美大生のお姉さん・一花。

 

たくさん考えていた夏休みの計画だけど、大人しい鈴が珍しく「絵を描くお手伝いがしたい」と言い出した事から、3人で夏中を過ごした。

 

出来事は、どこにでもある普通の事なのに、少しも飽きさせないどころか、ワクワクと引き込まれました。

子どもたちの真っ直ぐさにも惹かれました。

キラキラの一点の曇りもない、最高の夏休みではなかった。

いじわるガキ大将たちに絡まれたり、喧嘩したり口もきかなくなったり…。

でもいろんなことがあって、最後は青斗も鈴も勇気を出して、涙と笑顔でお別れできた、思い出深い夏休みになった。

 

最後の最後に、大人になった青斗と鈴が垣間見れる。

きっといつまでも忘れない宝物みたいな思い出なんだろうな。

この時の頑張りが胸に残っているから、大人になって辛いことがあっても“よし、頑張ろう!”って思えるんだろうなぁ。

 

時渡りが本当なのかどうかは、お話を読めば分かります。

青斗、鈴、一花…それぞれの思いがあった夏休み。

表紙絵のような素敵な景色が頭の中に広がりながらの楽しい読書タイムでした。

hontoのレビューではあまり星ついてなかったけど、おいらにとっては星5つの素敵な物語でした。

楽しい夏休みをありがとう!

読書感想文 第51巻

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『神さまになりまして、ヒトの名前を捨てました』

『神さまになりまして、ワガママを叶えました』

『神さまになりまして、オヤスミナサイを言いました』

作:石田リンネ/ビーズログ文庫アリス

 

土地神様は、その地域に生きるものを守ってくれる…守護と呼ばれる土地神様。

でも神様は直接人の運命には関与できない。

そこで変わりに、手足となって働く者を人の中から選ぶ。

選ばれた者は、守護代と呼ばれ神様と契約したと同時に成長が止まる。

土地神様も代替わり制。何百年も土地神として見守って、もう十分と思ったら、代替わりして引退。守護代の中から次の神様が選ばれる…

 

などなど、システム化された神様(守護)と守護代

その代替わりで新しく神様になった千鳥(役職名)と、時を同じくして新しく守護代となった帯刀(18才)、そして彼らを取り巻く仲間の守護代や他地域の神様たちのお話し。

 

神様や守護代の力を全部説明するとキリがないので、ここまで読んで興味を持たれたら、買って読んで下さい(笑)

 

女子率が著しく低いものの、BLではありません。

帯刀以外は、みんな200才越えの長生き(笑)

千鳥が最年長で400才越え(笑)

 

そんなご長寿組織の中に、クールな現代っ子の帯刀加入で、いい意味での相乗効果が発揮され、代替わりで落ち着かない人間関係が少しずつ、いい形に形作られ、お互い同士を思い合う気持ちが、読んでて気持ちいい作品でした。

 

クールに見えて実は違うでしょ(笑)な帯刀と、世話好きで常に周りに気を配り自分で自分を忙しくしてる千鳥は、実は似たもの同士なのかな…と思っています。

2人とも居場所を探し続けた日々を送ってきたから。

でも、お話の中で帯刀は千鳥や兄守護代達の言葉や態度から、自分なりの居場所をみつけ、千鳥も二巻目にしてやっと居場所が何なのかが分かる。

 

作品のタイトルから、あまり想像してなかったのですが、意外にバトルチックな展開が多く、その面でも楽しめました。

帯刀にできることが増えてきて、それが刺激になって一の宮・柏の新しい守護代チームの連携もどんどんよくなる。

一巻より二巻、二巻より三巻…読む事に面白くなっていって、最近出たばかりの三巻が一番面白い。

 

バトルのクライマックスも、その後の穏やかな時間も…千鳥の代替わりも守護代チームの代替わりも、シロさんの代替わりもとても素敵なお話しでした。

クラウド本棚にしまいこめない作品が、また増えました。

読書感想文 第50巻

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『僕とやさしいおばけの駅』

作:永菜葉一/富士見L文庫

 

小学5年生の優太君が主人公です

都会からお母さんと2人で、群馬県の横川駅からさらに奥に入ったところへ引っ越してきました。

お父さんはいません。お母さんは天国へ行ったと言うし、近所のおばさん達が“りこんして大変”と言ってるのも聞いたことがあるけど、優太君はお母さんに聞けずにいます。

 

学校へは電車で通います。

おばけの駅は、家の近くにある駅のこと。

いたずら好きの鎌鼬と力自慢の河童娘、ストーブのつくも神に狐のお面の駅長さん。

人間の駅員さんも一人。売店のおばあちゃんもたぶん人。

 

神様に選ばれてこの駅に来た人と、この世に未練を残した者との再会の駅。

優太君は、駅長さんのお手伝いをする事になりました。

 

お話しは優太君の転校のほんの少し前から始まります。

語り口はどちらかと言えば優太君目線的な感じ。

分かりやすい表現なのに、だらだら説明のない文章は、読みやすくて楽しいです。

 

新しい環境で頑張る健気な優太君と、同じように頑張るお母さん。

口には出さないけど、優太君のことをとても大事に思ってくれているのが分かります。

 

あやかし達との付き合いの中で、優太君は新しい環境でも今までのように楽しくなれる方法を学んでいきます。

ストーブのつくも神さんは、昔は人で先生だったから、宿題も教えてくれます。

駅長さんは、焼き饅頭をよくくれます。

駅員さん(人間の鉄道会社では駅長さん)は、いつも昼寝をしているけど、やさしいお兄さんです。

売店のおばあちゃんは、おばあちゃんと呼ぶと怒るので、名前で呼びます。

厳しいけどやさしいです。

 

するする読める文章で、一気に読んで後半の二つのエピソードではホロリと泣かせていただきました(゚ーÅ) ホロリ

心温まるエピソードが詰まっています。

分かりやすいだけに、先の想像もしやすいけど、そのおかげで安心して読めます(笑)

 

NHKとかで、子供向けドラマに出来そうな、そして大人もハマっちゃう的な楽しく読める一冊です。

小学生が読んでも楽しいと思います。

 

おばさんは、続きを楽しみにしています(笑)

椋鳥たちの夜(妄想族活動記)

夕方になると、駅のそばの木にたくさんの椋鳥たちが帰ってきます。

上下四車線の通りを挟んだ向かいにあるパチンコ屋さんのお陰で、賑やかさは思ったより目立たないです。

 

相当数がいると思われますが…

きっと彼らなりのその日の出来事情報交換会が繰り広げられているのかと思うと、足を止めて見ていたくもなります(笑)

 

「神社の裏のおばあさん、なんだか具合が悪そうで横になってたわ」

「あら…。秋になるとおいしい実のなる木がある家かい?」

「そう。横になったまま退屈そうにこっちを見てたわ。」

「実のない季節には米粒まいたりしてくれた…早く良くなるといいねぇ。」

 

「ビルの向こうに、また新しいマンション建ててやがった!」

「またかよ!?この辺も住みづらくなるなぁ。まあここみてぇな街路樹なら、そうそう無くなりゃしねぇけどな」

 

「母ちゃん!今日、山向こうの大きな川の方まで行ったんだよ!兄ちゃんと!」

「そんな遠くまで?気をつけないと、あの辺は大きなカラスや鷺がいるんだからね」

「お前、母ちゃんには内緒だって行ったろ?」

「ごめん兄ちゃん。でも面白かったね。大きな人間がパンくれたり、小さな人間に追っかけられたり!」

「人間も、時には怖くなるからね。用心しなきゃだめよ?」

 

「今日はとんでもない目にあったよ」

「どうした?」

「いつもの調子で公園のベンチに止まって、お日様背負って昼寝したら、猫に追っかけられてよぉ」

「おいおい、よく逃げてこれたな」

「飛びかかられる寸前で気づけたからな。…それにしてもありゃぁ見かけねぇ面だったから、流れもんだな」

「おい、そういうことは、てっぺんの長老様にお伝えしてこい。みんなに気をつけるように注意してもらわねぇと!」

「そうだな!」

 

読書の秋…もの想う秋…妄想族の活動も活発化する秋です(笑)

読書感想文 第49巻

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『紅霞後宮物語一~四』

作:雪村花菜/富士見L文庫

 

全体的に派手なイメージのあるカバーで、あらすじ読む限り、ただの後宮ドロドロ物語ではないようだったので、ずっと気にはなってましたが、やっと読めました。

 

話があちこち飛びすぎないし、余計な説明文章を入れず、登場人物の心情を語っていくことで、どんどん話が進む印象。

女性が文官武官のどちらでも、男性と同様に活躍してるのがいい。

皇帝が男子継承になったのは、もともと女帝国家だったけど、妊娠~出産~産後の育児期においても女帝の仕事をしなきゃいけなく、あまりの激務に何代目かの女帝が、これは無理だと男子継承にする遺言を遺したから(笑)

時代物にありがちな、女は不浄のもの扱いされてないところも好きです。

皇帝も皇后も、もとは軍人同士。

政略的な事から、かつての女上司を皇后にしたわけだけど…。

アラサーな2人は妙にサバサバしてて、会話が夫婦漫才のよう(笑)

夫婦として…よりは、同志として、時を経るごとに少しずつその絆をより強固にしてるかんじです。

皇后が軍を率いて戦うことも許されてるので、二巻以降は内乱鎮圧など軍事面での活躍も多い皇后。

それに対して、悪い人じゃないけど、ブラックな面も冷酷非情な面も持たなければいけない皇帝。

後宮をめぐる争いの中で…戦の中で…大事な人を亡くすこともある中、こういう夫婦関係もありだと思う、おいら的には好みのお話しでした。四巻で終わりじゃないよな…。続き読みたいし。

 

とりあえず外伝読んで待ってます。(笑)

読書感想文 第48巻

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『ぼんくら陰陽師の鬼嫁』

作:秋田みやび/富士見L文庫

 

京都が舞台の現代物語。

現代物でもいろいろ見てきた陰陽師系のお話しですが、この話が一番身近に感じました(笑)

突然出会って契約結婚をする表紙の2人ですが、実はその前からの縁(えにし)がおありで。

 

五行相剋とかの話は、身近な例をあげてもらったので分かりやすかったです(笑)

契約前提なので、素直じゃないところがあったり、ぼんやりと嫁姑の争いがあるけど、姑さんとの争いがぼんやり見える程に、お互い悪くは思ってないようで、かわいらしい嫌みに対してのスルースキルがあれば全然平気なレベルで、バトルらしい感じはしなかった。

これから1人ずつ、おじゃま親戚が増えるのかなぁ(笑)

 

普段読み慣れてるお話では十二神将だったけど、ここでは数は同じ十二天将

今回の登場は、白虎と玄武(ツインズ)と天后。

こっちの天后はゴスロリだけど、向こうの天后に着せても似合いそうだ(笑)

 

いろんな所でいろんな解釈で読めて、素直に面白いと思ったのは、ここが初めてかも。

自分の中では、十二神将であの絵柄でイメージ固定されてるから、違うとあまりいい気がしないことが多かったけど。

人それぞれの解釈があるから当然なんだけど、上手く飲み込めないというか。

でも、このお話の天将達は、同じ素材で違う味付けの料理もおいしかった…そんな感じです(笑)

 

これも続きが楽しみな一冊になりました。