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読書感想文 第44巻

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『カスミとオボロ 大正百鬼夜行物語』

作:丸木文華/集英社オレンジ文庫

 

時代ものでもあまり見かけることの無かった大正時代。

はいからさんが通るくらいしか記憶にない(笑)

 

祓う系のお話しだと安倍晴明の末裔とか傍系とかが多い中、こちらのご先祖は坂上田村麻呂

千年前に封じられた鬼が寝ぼけている間に名を与え使役と下した坂之上香澄。

使役とされ、香澄に本当の名を呼ばれぬ限り人の形(なり)を取らねばならぬ鬼の王・悪路王(朧)。

この鬼は、人の持つ邪念を好む鬼達を喰らう。

 

香澄に関わる人たちの怨みの思いにすり寄る鬼。憑かれた方も鬼によってどんどん狂わされる。

香澄の家は華族様(伯爵家)なので、まぁ邪念を持つ人には事欠かず、朧にとってはバイキング形式で喰いたい放題な訳だけど、もうちょっと待って味に旨味を…とか、変にこだわるグルメぶりを見せるかと思えば、初めて食べた羊羹をこよなく愛するお茶目な面もあり。

 

ただし…表面上、使役に下した香澄が主で朧は使われる側。

のはずだけど、どうも朧は何か隠している様子。

この先の展開が楽しみになりました。

 

今回の話はいずれも女の怨みの鬼達。

平安の頃もそうですが、女性は身分が高ければ高いほど、家の中に閉じ込められ、大正時代は“職業婦人”なんていって、やっと女性が家の外へでる事が少しずつでも認められてきた時代。

うちに籠もってる女性達の方が、さぞ怨みも深かろう…ということなんでしょうかね。

訳あって鬼となるもの、初めから鬼の気質を持って生まれるもの、それぞれですが、一番最初の飼い猫が出てくる話は、ちょっと切ないものがありました。

 

大切にしてくれた主を一途に思う気持ちが鬼となることを受け入れる。

今回は結果オーライだったけど、もっと悲しい幕引きもあるんだろうなぁ。

今後出るであろう続きでは、そんな部分も見てみたいなぁ…。